スーパーファミコン

『ヘラクレスの栄光3』のシナリオが「神」と語り継がれている理由

最後にゲームで泣いたのはいつだろう。

記憶をさかのぼってみると、『マインクラフト』でエンダーマンから執拗に攻撃されたときや『大乱闘スマッシュブラザーズSP』のオンライン対戦で屈伸煽りをされたときなど、ここ数ヶ月間でもかなり泣いています。

しかし、そういう意味の「泣いた」ではありません。物語に心を動かされて泣いたのはいつだろう、という話です。

おそらく私は2009年発売の『ペルソナ3ポータブル』のエンディングで。死生観の強い物語ということもあり、大号泣してしまいました。のちに映画化されたときは、映画館で声を押し殺して泣いたのを覚えています。

ということは、かれこれ10年以上もゲームで泣いていない。そんなときに出会ったのが1992年発売(いまからちょうど30年前)の『ヘラクレスの栄光3 神々の沈黙』です。

どれほど泣いたのかというと、ゲームプレイ時にひと粒の涙も流しませんでした。

は?????

文脈をガン無視してごめんなさい。このゲームで泣く人はあまりいないと思います。

しかしながら、こんな結末のゲームを後にも先にも私は知らない。発売当時の1992年から30年間の時を経た2022年現在もなお私たちは同じ問題を抱えているのではないか。と、激しく心を動かされました。

『ヘラクレスの栄光3』のシナリオが「神」と語り継がれている理由について、私なりの言葉で綴りたいと思います。

『ヘラクレスの栄光3』のシナリオが「神」と語り継がれている理由

オリジナル版とリメイク版の違い

30年も前のゲーム『ヘラクレスの栄光3』を知ったきっかけはゲーム好きの友人・ともちゃん(@tomot939)からの紹介です。

前回の記事の「思い出のゲーム20選」について話していたところ教えてもらいました。

ともを

私が記憶を消してもう1回プレイしたいのは『ヘラクレスの栄光3』っていうゲームだよ!

調べてみると、『ヘラクレスの栄光3』が発売されたのは1992年(スーパーファミコン)。それが2008年に携帯電話アプリ向けにリメイクされていました。さらにそのリメイク版が2020年にNintendo Switchへ移植。

そして、たまたまキャンペーンをやっていて450円で販売されていました。これは運命(買い)では? ※現在は500円で販売中

どうやらオリジナル版はゲームバランスがかなり悪かったとのこと。そこでリメイク版はシステムやグラフィックなどが劇的に向上。いろいろと簡略化されているものの、シナリオに大きな違いはないそうで。

ストーリーを追いたかった私はSwitchに移植されたリメイク版を購入しました。5~6時間ほどでさくさくクリアできるため、シナリオを知りたい人には超おすすめ。

【ともちゃんのブログ記事】
人におすすめする時ってちょっと不安ある」←教えてもらった経緯

『ヘラクレスの栄光3』あらすじ

『ヘラクレスの栄光3』は、記憶を失っている不死身の主人公が自分の正体を知るために世界中を旅して回る物語です。

正直なところ、ここだけ聞いても大きな興味は湧かないでしょう。

しかしながらこのゲームは、自分の正義感がいかに薄っぺらいものだったかを思い知らされるゲームです。信じていたものが覆された瞬間、膝から崩れ落ちるような衝撃でした。

もしこの時点でこのゲームに興味を持ち、今後1%でもプレイする可能性があるならこの先はネタバレを含むため読まないでください。

もう30年も前のゲームを今後もやるつもりがない人は、この『ヘラクレスの栄光3』というゲームで私がなにを感じたのか読んでいただけたら幸いです。

『ヘラクレスの栄光3』解説

 

下記、大きなネタバレを含みます。1%でもプレイする可能性がある人はどうかご自身で体験してみてください。

まずこのゲームの大きな特徴として、【過去】【現在】【天界】【冥界】【人間界】のパートが交錯しています。とても複雑に。

始まりは現在の人間界。記憶を失った状態で目覚めた主人公は、自分の体が不死身であることに気がつきます。その特殊な体を活かして人々を脅かす魔物を退治していました。

すると、主人公の境遇と同じ人間が仲間になっていきます。

主人公たちが旅をしながら見たものは、荒れ狂う魔物・奴隷として売られる若い女性・差別から生じるいじめ・暑さが続く異常気象など、この世界の危機でした。

それらをどうにか救うべく、目の前の問題に対して最善を尽くしていきます。勇敢に立ち向かう姿はまさに英雄そのもの。

また、主人公たちは旅をしていくうちにとある海峡を陸続きにさせて国を繁栄させた男・バオールの存在を知ります。彼は大きな功績を残した一方で、そのやり方に批判を受けると逆上して殺戮を繰り返したとのこと。

そのころ、天界・冥界では主人公たちの行いに対して神々が沈黙を貫いていました。というより、みんな機嫌が悪い。

そうこうしているうちに神のひとり・ゼウスが大洪水を起こします。それにより世界中の人々が命を落としてしまいました。

このように前半は、バッドエンドのような展開を迎えます。しかしながら主人公たちは魔物退治や奴隷解放など、すべてにおいて最善を尽くしてきました。それなのになぜ。

じつは天界・冥界の神々は、主人公たちを使ってとある勝負をしていました。それは、傷ついたガイア(世界)を救うこと。

ガイアを救うことができた者が「王」となる権力争いです。そのため、神々はそれぞれに《策》を考えていました。

【ゼウス】(天界)
神々の頂点に立つ存在。事あるごとに雷を落としがち。洪水で人間を滅ぼしてガイアを救おうとしている。ガイアのことがだ~いすき。

【プロメテウス】(天界)
3人の人間の記憶を奪い不死の肉体を与える。人間に希望を持ち、人間が自らの意志でガイアを救うことを望む。いっさいの助言をしないドS。

【ウラノス】(幽閉)
ゼウスによって幽閉されている神。巨人アトラスの石化によって閉じ込められているためプロメテウスが選んだ3人の人間を利用して石化を解こうとする。ガイアを救うことよりゼウスへの恨みのほうが強い。

【ハデス】(冥界)
冥界の支配者。人間・バオールに若さと不死の肉体を与え、魔物とともに人間を滅ぼすよう命令する。

冥界の支配者・ハデスがバオールに目をつけた理由は、人間界での所業を見込んだため。

彼は過去に海の神・オケアノスの子どもを海峡まで引きずったあと石化させ、陸に変えた非道な人物。子どもを石化させられたオケアノスは怒り狂い、魔物となって人間を襲うようになりました。

そして無理やり地形を変えられたガイアは傷つき、生態系は崩れ、異常気象が発生。海峡が陸続きになったことで国が繁栄する一方で、植民地や奴隷などで苦しむ人は増加。

バオールの暴走は止まらず、しびれを切らしたゼウスに雷を落とされ命を落としました。

しかしハデスにとってその野心は都合がよいもの。バオールに若さと不死の肉体を与え、魔物とともに人間を滅ぼすよう命令します。

ところが、ゼウスはそれを許しません。ハデスの命令で地上に戻ったバオールは再びゼウスの雷に打たれて意識を失います。目を覚ますとすべての記憶が失われていました。

それがこのゲームの冒頭

つまり、主人公(プレイヤー)はバオール。

プロメテウスによって記憶を奪われ不死の肉体を与えられていたのはヘラクレスの子孫とオケアノスに仕える巫女、そして父親を激しく憎むバオールの息子でした。

記憶を失っている彼らはお互いの正体を知らないまま世界中を旅して回ります。果たして自らの意志でガイアを救うことができるのか。神々は勝負の行方を眺めていました。

しかし、あろうことか主人公たちは幽閉されているウラノスの口車に乗せられてしまい、巨人の石化を解こうとします。

これではガイアを救うことができません。そこでゼウスは大洪水を起こします。こうして世界中の人々が命を落としてしまいました。

ゼウスの大洪水を回避するには、主人公たちが自らの意志でオケアノスの子どもの石化を解く必要があります。

ハデスは、記憶を失い命令に背いたバオールを無限地獄・タルタロスへと幽閉しました。醜い姿へと変貌したバオールは時空を超えて過去の自分と対峙させられてしまいます。

変貌した自分の姿を見た過去の自分は、ここでようやく記憶を取り戻しました。自分の罪を、そして自分の使命を。

同じように記憶を取り戻した仲間たちと全員でオケアノスの子どもの石化を解くと、ガイアがもとの姿に戻ります。

ヘラクレスの子孫とオケアノスの巫女は新たな旅へと出発しました。そして、非道な父親を憎み続けてきた息子からは「一緒にいたい」と告げられます。

ところがバオールは自分が犯した罪を償うために再び無限地獄へと落ちていきました。いつかまた、人間として転生するその日まで。

『ヘラクレスの栄光3』感想

諸悪の根源が主人公(プレイヤー)だった、というシナリオです。

記憶は失っていたものの、バオールは自分にできる最善のことをしながら仲間たちと世界中を旅して回りました。それでも罪は償い切れず、最後は再び地獄に落ちていきます。

私がさらに衝撃を受けたのは、この物語の舞台が地球だったこと。オケアノスの子どもの石化を解いたあとワールドマップが浮かび上がるのですが、実際の世界地図でした。※オリジナル版のみの演出

もちろん物語はファンタジー。しかし主人公たちが旅をしながら直面した社会問題はすべて現実世界のもの。発売当時の1992年から30年間の時を経た2022年現在もなお私たちは同じ問題を抱えているのではないでしょうか。

最後にゼウスは言います。「この世界にはさまざまな存在がある、お前たちがすべてではない」と。なるほどたしかに。

だれかにとっての善はだれかにとっての悪でもあり、物事は多角的に考え多面的に見る意識を持つ必要があると胸に刻みました。

『ヘラクレスの栄光3』のシナリオを書いた野島一成氏はのちに『FF7』や『キングダムハーツ』など数々のヒット作を手がけています。私はバオールにセフィロスを重ねてしまいました(『FF7クライシスコア』の)。

このゲームは本当に神シナリオだと思います。そう、ヘラクレスだけにね!!!!!

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ヤナマリ(柳本マリエ)
柳本マリエを略してヤナマリと呼ばれています。KADOKAWAより著書『デブからの脱却』発売中。メインブログは「ヤナマリチャンネル
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